2023年にリテールメディアに投じられる広告費は推定1260億ドルに上り、その機会は膨大です。ただし、すべての小売業者が望んだ通りの成功を収めているわけではありません。では、勝敗を分けている要因は何でしょうか?
2023年8月、PubMaticはForrester Consultingに委託し、最も成功しているコマースメディア・ネットワークの特徴をはじめとするコマースメディアの現状を調査しました。この調査で明らかになったことを、本記事でさらに掘り下げてみましょう。
コマースメディアにおける主な課題
Forresterの調査によって、業界の誰もが知る事実が改めて確認されました。それは、コマースメディアが急速に成長しているということです。調査で明らかになったのは、小売企業のビジネスにおけるコマースメディアの貢献度は2年間でほぼ倍増し、小売企業が今後1年間で貢献度をさらに倍増させたいと考えていることでした。
初期のリターンは極めてポジティブで、コマースメディアを導入した小売企業の95%が、そのプログラムが期待されるROI(投資対効果)を上回っているか、もしくは達成していると回答しています。しかし、成功のレベルにはまだばらつきがあり、克服しなければならない大きな障壁もあります。多くの小売企業は、技術、プロセス、ロジスティクスにまたがる大きな課題に直面しているのです。
小売企業の成功レベルの違いは、コマースメディアの今後の方向性と、成功のために必要なものについて、興味深い傾向を示しています。一般的に、高い成功を収めている小売企業は、サプライヤーや消費者との関係を改善し、ファーストパーティデータをマネタイズすることに注力しているのに対し、低い成功にとどまっている企業は、収益源を見つけることに注力しているか、コマースメディアを試験的に運用しているだけでした。また、技術プロバイダーとの関係においても、成功レベルが高い小売企業と低い小売企業では顕著な違いが見られました。
差別化要因としての技術パートナーシップ
コマースメディアで成功するには知識と戦略が鍵となりますが、小売企業が直面する最も一貫した課題は、コマースメディアを戦略的に展開するための専門知識が社内に不足しているということです。今後、企業は知識と専門知識のギャップを埋めるために、技術パートナーを活用することになるでしょう。
PubMaticの調査によると、高い成功を収めている小売企業は、コマースメディア戦略における以下の3つの中核領域において、かなり高い効果を上げています。
- 規模拡大に必要なリソースとパートナーの確保
- ROIを実証する能力
- マネタイズと顧客体験のバランスをとる能力
全体として、小売企業はコマースメディア・ネットワークに採用している既存技術往々にして、ポイントソリューションとリパーパスド(再目的化された)技術の組み合わせは、自社のニーズを満たしていないと回答しています。将来的に技術パートナーの変更を計画しているとの回答も49%に上りました。
適切な技術パートナーを選択し、そのパートナーの戦略的サポートを活用することは、成功において非常に大きな役割を担います。Forresterのアンケート調査によると、成功レベルの低い企業は高い企業に比べ、技術パートナーからのサポートが不足している可能性が2倍近くに上ります。
技術パートナーの能力に関して、小売業者はデータプライバシーを最重要視し、統合オークションソリューション、柔軟性、カスタマイズ性、拡張性を重視していると述べています。アンケート結果の要点は以下の通りです。
- 86%は、所属企業が複数の戦術とデータセットにまたがるマネタイズと獲得を促進するために、組織全体で統一されたオークションソリューションを必要だと回答しています。
- 82%は、所属企業が複数の戦術を一元的に推進するシームレスな顧客体験を提供できるような、柔軟でカスタマイズ可能なコマースメディア・ネットワークのソリューションを必要だと回答しています。
- 81%は、小売業者が単独で規模を拡大するには小さすぎるため、広告主が小売業者全体で購入できるようにするツールを所属企業が望んでいると回答しています。
コマースメディアが将来的に成長するためには、高度な測定が鍵となります。小売企業は、ブランドや広告主に真の増分指標を提供する能力を備えなければなりません。同時に、オフサイトインベントリは、多くの小売企業が報告している規模の課題を考えると、コマースメディアの有望なフロンティアでもあります。サードパーティCookieが消滅していくなか、大規模な小売企業は関連性の高い広告を提供する有利な立場にあります。オフサイト広告と店舗内広告は、現在のオンサイトソリューションよりもはるかに大きな広告機会となります。
一方、成功を目指す小規模のコマースメディア・ネットワークは、サプライサイドの連合体の形成を目指すべきです。多くのコマース企業は、ウォールドガーデンのように運営することを正当化できるほどの規模がありません。大規模なネットワークに参加し、関連するインサイトを共有することで、競争力を失ったり、消費者のプライバシーを犠牲にしたりすることなく、提供するサービスの質を高めることができるでしょう。
適切な技術パートナーシップは、小売企業が急成長するコマースメディアで競争するために必要な規模、アカウンタビリティ、そして重要なアジリティ(俊敏性)を実現するのに役立ちます。結局のところ、コマースメディアにおける成功とは目的地ではなく継続するジャーニーであり、常に変化する状況に適応し続ける企業が、このダイナミックな領域で成功するための最適なポジションを確保できるでしょう。