A woman is seated at a desk staring at a wire connected to the laptop in front of her

Server-to-server (S2S)

Professional headshot of Mike Chowla
By Mike Chowla, Senior Director of Product Management, Header Bidding
July 20, 2018

監修担当:
パブマティック株式会社 
シニアカスタマーサクセスマネージャー
菱田 遼

クライアントサイドのヘッダー入札の登場以来、サイト運営者は収益化とユーザーエクスペリエンスのどちらを優先させるか、頭を悩ませてきました。ラッパーにSSPパートナーを増やせば収益は向上しますが、ラッパー内にSSPを増やすには追加接続を要するため、結果としてレイテンシーを増やすことになってしまいます。

ですが、もう悩む必要はありません。今やクライアントサイドのヘッダー入札だけが私たちの選択肢ではないからです。これからは、Server-to-server (以下、S2S)ヘッダー入札の時代です。S2Sヘッダー入札を採用すれば、収益化かユーザーエクスペリエンスかのトレードオフに悩む必要はなくなります。

S2Sヘッダー入札のメリットは、なんといっても広告のビューアビリティ(可視性)と収益の向上につながることです。S2Sヘッダー入札では、ブラウザはパブリッシャーが使っているすべてのSSPが接続しているラッパーのサーバーに1回通信するだけで、入札単価を取得できるのです。つまり、サーバー間の通信のみで事足りるため、パートナーを追加する度に接続を増やしてブラウザをダウンさせてしまうようなことがなくなり、ページの読み込みが速くなります。すると広告のビューアビリティ(可視性)が高まり、収益が向上するというわけです。

こういったメリットがあるため、S2Sヘッダー入札は、業界中で大いに話題を呼びました。しかし、メリットと同時に次のような懸念事項も指摘されているため、実際にS2Sを採用するパブリッシャーはまだ伸び悩んでいます。

Cookie一致率低下への懸念

S2Sヘッダー入札の採用を検討するパブリッシャーにとって最大の懸念事項は、「S2Sヘッダー入札を使うと、Cookieの一致率が低下して、結果として減収の原因になってしまうのではないか?」ということでしょう。

クライアントサイドのヘッダー入札では、SSPとの通信はブラウザから直接行われるため、SSPのユーザーID Cookieがリクエストに含まれます。S2Sヘッダー入札では、クライアントサイドのヘッダー入札とは違って、ヘッダー入札側のサーバーとSSPが異なるドメインにあるため、ブラウザはSSPの ユーザーID Cookieを送信しません。よって、ヘッダー入札サーバーがSSPのユーザーID Cookieにアクセスするには、ヘッダー入札サーバーと各SSPとの間でCookieの同期を行う必要が生じます。このプロセスが追加されるため、S2Sヘッダー入札におけるCookie一致率はクライアントサイドのヘッダー入札におけるCookie一致率よりも、ほんのわずかですが、低くなってしまうのです。

ただ、それを理由にS2Sヘッダー入札の採用を諦めるのは得策ではありません。というのも、S2Sヘッダー入札が広く使われるようになればなるほどCookieの同期が多く行われるようになり、Cookie一致率は向上するからです。

サーバーインフラの必要性

さらに、クライアントサイドのヘッダー入札とS2Sヘッダー入札には、インフラの点でも違いがあります。クライアントサイドのヘッダー入札の場合、パブリッシャーはWebページにラッパーコードを含める必要がありましたが、ヘッダー入札専用のサーバーインフラは必要ありませんでした。一方で、S2Sヘッダー入札の場合、パブリッシャーはヘッダー入札専用のサーバーインフラを整備する必要があります。

PubMaticでは、すべての関係者に対して透明性を提供し、かつ多くのデマンドにアクセスすることのできるオープンソースのヘッダー入札技術をお客様におすすめしています。しかし、オープンソースのラッパーコードを使用するからと言って、パブリッシャーが自前のサーバーインフラを整備・管理しなければならないという意味ではありません。

当社では、複数のベンダーがPrebid Serverをホストしたヘッダー入札のサービスをご提案しています。たとえば、PubMaticではPrebid Serverを使用して構築されたホスト型S2Sヘッダー入札サービスを当社のOpenWrapの一部として、提供しています。

S2Sヘッダー入札の時代へ

以上、S2Sヘッダー入札の懸念点を少し紹介しましたが、最近、S2Sヘッダー入札を取り巻く環境に変化が見られるようになりました。この変化をけん引しているのが、アクセラレーションモバイルページ(AMP)とアプリという、2つの新興ヘッダー入札チャネルです。

AMPとは、2016年2月にGoogleが導入した、モバイル端末(スマートフォン・タブレット)でのウェブページの表示を高速化するためのプロジェクトです。AMPでは、2017年に機能が変更され、クライアントサイドのJavaScriptをDouble-click for Publishers(DFP)の広告サーバーで使用できなくなりました。これによって、AMPページを持つパブリッシャーがつかえる唯一のヘッダー入札オプションは、S2Sヘッダー入札のみになったのです。

一方、アプリでは、Prebid MobileやOpenWrap In-Appなど主要な入札ソリューションに使えるのは、S2Sヘッダー入札のみです。もし、S2Sヘッダー入札が使えない場合、通常は入札者ごとにSDKを実行するほかありません。この方法では、アプリに負荷がかかり、安定性が脅かされる可能性があります。

S2Sヘッダー入札は、アプリの新バージョンをリリースしなくても、デリバリーパートナーを追加または削除できる機能があるので、アプリ内広告に非常に適しています。 さらに、アプリはCookieではなく広告IDを使用してユーザーを特定するため、パブリッシャーが気にしがちなCookie一致率の問題によって収益が左右されることはありません。

いずれにせよ、S2Sヘッダー入札の導入は、今後も増加し続けると考えられています。ある調査によると、S2Sヘッダー入札を導入するヘッダー入札サイトの割合は、2017年9月には全体の28%でしたが、2018年5月には42%にまで増加しています。今後、レイテンシーの問題が改善され、S2Sヘッダー入札チャネルのけん引力が向上すれば、S2Sヘッダー入札を導入するサイトの数は、ますます増え続けるでしょう。

S2Sヘッダー入札ベンダー選びのポイント

では、S2Sヘッダー入札を導入する場合、パブリッシャーはどんなことに注意すべきなのでしょうか?最も大切なのは、ベンダー選びです。まず、パブリッシャーは、新たなデマンドパートナーを追加する難しさを認識すべきですし、設定の容易さに配慮する必要があります。クライアントサイドからサーバーサイドへの移行、あるいはその逆を試すなどして、収益やユーザーエクスペリエンスのニーズを満たすのに最適な構成を見つけてください。

また、ベンダーの分析力の確認も忘れずに。S2Sヘッダー入札のセットアップの管理や最適化についての分析データが豊富なベンダーであればあるほど、パブリッシャーは収益を増やすことができます。

PubMaticが提案するのは、ハイブリッドソリューションです。たとえば、一部のSSPパートナーについてはマッチ率を最大化するためにクライアントサイドで連携し、残りのパートナーはサーバーサイドで連携するといった方法などがハイブリッドソリューションでは実現できます。

S2Sヘッダー入札についての詳細は、こちらのページをご覧ください。