※本記事はstreamingmedia.comの記事を転載したものです。
現在、デジタルマーケティングの分野で台頭する2つのスーパーパワーがありますが、それらは競合しているのではなく、融合しています。これはマーケターにとって素晴らしいニュースです。
CTVとコマースメディアの融合が進んでいるおかげで、長い間約束されてきたテレビの「ショッパブル(購入可能)な」未来が到来しつつあります。米国の成人が1日に費やす平均時間の比較において、2024年にはデジタル動画が従来のテレビよりも約1時間長くなる見込みであり、こうした力関係の変化によって広告主のデータ機能が強化されてきました。同じく2024年、米国のコマースメディアへの支出は約600億ドル(約9兆2100億円)に急増する見込みです。この支出とともに、ファーストパーティショッパーデータの価値に対する広告主の意識も高まり、コマースメディアへの支出はCTVにさらに深く浸透しています。
CTVとコマースメディア戦略を統合することで、広告主はコンシューマージャーニー全体でブランドの認知度、エンゲージメント、コンバージョン率を向上させる比類のない機会が得られます。ただし、この拡大する機会を最大限に活用するには、その融合を推進するパートナーや、真にショッパブルな体験を生み出す新たなCTVフォーマットの両方を認識する必要があります。両分野を掘り下げてみましょう。
急速に進化するパートナーシップの環境
コマースメディアとCTVの融合は、短期間で劇的に変化してきました。2023年春以来、コマースメディアとCTVのパートナーシップは増加しています。例を挙げてみましょう。
- Amazon Prime Videoは2024年に広告を導入し、この「破壊的な力」が初年度に30億ドル(約4600億円)以上の収益をもたらすと予想されています。
- WalmartはスマートTVメーカーのVizioを買収する計画を発表し、小売データ主導型CTV広告の取り組みを強化する姿勢を示しています。
- さらにWalmartはNBCUniversalと提携し、配信サービスPeacockでBravoチャンネルのドラマを観る視聴者向けに「ショップ・ザ・モーメント(シーンに関連する商品をすぐに購入できるようにする機能)」を初めて実現しました。
- RokuはBest Buyと提携し、「業界をリードするデータを組み合わせ、より関連性が高くパフォーマンスドリブンなテレビ広告にする」と発表しました。
- 大手スーパーマーケットチェーンのKrogerはDisneyと提携し、「ストリーミング視聴者を対象に、世帯ごとの売上やコンバージョンを含む成果を測定するためのファーストパーティの行動データを共有する」と発表しました。
上記のパートナーシップは氷山の一角に過ぎません。広告主の立場からすれば、統合されたCTVを最大限に活用するため、すぐに導入できるCTV広告ソリューションを提供している大手小売業者と直接提携することも考えられるでしょう。あるいは、小売店の視聴者データとプレミアムCTVインベントリを結びつけ、複数のプラットフォームでのキャンペーンを可能にするセルサイドの技術パートナーと協力することも可能です。
CTVフォーマットのショッパブルな未来
広告主にとっては、コマースメディアのデータをCTVインベントリの購入に統合する提携の拡大に加え、よりショッパブルなCTV体験を実現する新たな機会が到来します。例を挙げましょう。
- スクロール可能なCTV広告: BrightLineによると、スクロール可能なCTV広告(ユーザーがクリックやスクロールで商品やサービスを探すことができる広告)は、驚異的とも言えるエンゲージメント率4%という大きな成果をすでにブランドにもたらしています。
- 統合ショッピングプラットフォーム:新しいプラットフォームがスマートTVに直接統合されつつあり、視聴者は番組や広告、生放送で見た商品を即座に購入できます。こうした統合により、視聴者は別のデバイスを必要とせず、リモコンを使って商品を購入できるので、プロセスがシームレスになります。
- QRコードの統合:多くの放送局が現在コンテンツにQRコードを埋め込んでおり、視聴者はこれをスマートフォンでスキャンすることで、商品ページにすぐアクセスできます。この方法は、従来のテレビ視聴とオンラインショッピングのギャップを埋め、プロセスをよりインタラクティブで即時性のあるものにしています。
- 人工知能(AI)の強化: AIは現在、視聴者の視聴習慣や嗜好に基づいてパーソナライズされた推奨商品を提供することによって、ショッピング体験を向上させるために利用されています。この技術はまた、テレビ番組や広告で紹介された商品を自動的に識別してタグ付けするので、視聴者は簡単に購入できるようになります。
- 音声コマンド:スマートテレビにおける音声操作アシスタントの台頭により、視聴者は音声コマンドを使って商品を検索し購入できるようになりました。このハンズフリーのアプローチにより、テレビで見た商品を探すプロセスが容易になり、アクセシビリティと利便性が向上します。
このような強化された広告機会がより広く利用できるようになると、広告主は当然、関連するCPMの上昇が価格に見合うかどうかを問うようになります。参入コストは高く見えるかもしれませんが、結果の数値を表面的に分析するだけでも、広告主のためらいを解消するのに十分なはずです。
CTVとコマースメディアのデータを併用することで、ブランドはインプレッションではなく顧客価値に合わせて支出を調整し、メディアの効率とブランドの成果を向上できるようになります。バイヤーは従来、幅広い年齢や性別の人口統計とそれに関連するCPPやCPMに基づき、TVキャンペーンを計画してきました。一方でCTVは、ブランドが従来のCPM中心の人口統計ベースのターゲティングから、より豊かな価値ベースの入札へと進化することを可能にします。この強化されたターゲティングによって、広告主は最もROI(費用対効果)の高いエンゲージメントに投資を向けることができます。
CTVとコマースメディアの融合は、ブランドが長い間切望してきた、よりまとまりのあるオムニチャネルキャンペーンを実現する機会を提供します。コマースメディアのデータを活用することで、ブランドは自宅のテレビとオンラインショッピング時のスマートフォンやPCの両方で顧客を取り込み、同時にブランドメッセージを強化し、コンバージョンを促進できます。ただしこれがうまくいくのは、バイヤーがブランド戦略とパフォーマンス戦略の間のサイロを解消し、CTVとコマースメディアを合わせて計画する場合に限られます。
以上が、2つのスーパーパワーが融合したときに起きることなのです。