AIとパブリッシングをめぐる議論はこれまで、破壊的なイノベーションへの懸念が優勢でした。しかし、PubMaticが分析した独自の最新データからは、異なる事実が明らかになっています。賢明なパブリッシャーは、AI革命を生き延びているだけでなく、AIを活用して新規オーディエンスの拡大を実現しているのです。
SimilarWebが収集したパブリッシャーサイト1万件のトラフィックパターンをPubMaticが分析した結果、AIドリブンの発見で好成績を上げているコンテンツカテゴリが明らかになりました。そして、その商業的機会は一般に考えられているよりも大きいものでした。
重要なのは、AIが収益を牽引するタイミング
すべてのパブリッシャーが注目すべきデータポイントがあります。AIプラットフォームにおける商業目的のシェアは毎月1%増加しており、現在ではほぼ10%に達し、月間約20億件のクエリに影響を与えています。AIによるやりとりの90%は依然として情報提供のみを目的としており、「インフレが起きる仕組みは?」や「最も健康的な食事は?」といった質問が多いとはいえ、成長が続くこの10%のシェアは、AIプラットフォームが回答エンジンから取引促進ツールへと進化しているという前例のない変化を示しています。
AIがもたらすトラフィックを牽引する5大カテゴリー
業界でAIの影響について議論が続くなか、以下の5つのパブリッシャーカテゴリは新たな発見の経済においてすでに支配的な地位を確立しています。
- ニュースとメディア
- アートとエンターテインメント
- 科学と教育
- 家電
- eコマース
偶然にこの結果になったわけではありません。各カテゴリはAIプラットフォームに必要なもの、つまりユーザーが意思決定を行う際に頼りとなる信頼性の高い情報を提供しています。共通点は、AIを介したコンシューマージャーニーにおいて、これらのカテゴリが不可欠な存在となっていることです。
成長を支える3つの成功パターン
データから、3つの明確な成功パターンが浮かび上がっています。
- 急成長型:eコマースサイト1は、2025年7月だけで月間訪問者数が前年比で1億1800万人増加し、最も高い成長を遂げました。同カテゴリはまた、AI革命の中心に位置し、ウェブトラフィック全体の大部分を占めています。特にアパレル小売は同時期に10%の成長を遂げました。これらのパブリッシャーは、AIを活用した商品発見の鍵を握っているのです。
- 持続型:「旅行・観光」と「乗り物」は、業界の大きな変化にもかかわらず前年比で安定しており、体験重視のコンテンツがAIの分野でも自然な持続力を持つことを証明しています。
- 着実型:「飲食・ナイトライフ」のパブリッシャーは前年比で3%成長しており、発見の手法が進化しても地域密着の体験型コンテンツがエンゲージメントを促進し続けることを示唆しています。
明らかになったパブリッシャーの新戦略
台頭しつつあるパターンは明らかです。AIを介した意思決定における自社の役割を把握するパブリッシャーは、持続可能な競争優位性を築いています。成功しているパブリッシャーは、ユーザーを支援する内容が「商品の比較」「体験の発見」「複雑なトピックの理解」などどんなものであれ、AIドリブンのコンシューマージャーニーにおいて不可欠なパートナーとしての地位を確立しています。
機会はトラフィックだけにとどまりません。AIプラットフォームへの商業的関心は四半期ごとに高まっており、現在AIによる発見と強固な関係を築いているパブリッシャーは、これらのプラットフォームが本格的なコマース環境へと成熟するにつれて、極めて大きな価値を獲得できるでしょう。
10億ドル規模の投資
業界のリーダーたちはすでに動き出しています。主要なAIプラットフォームはすべて、コマース機能、アフィリエイトパートナーシップ、直接取引機能を実験しています。今日成功しているパブリッシャーは、単にトラフィックを獲得しているだけではありません。未来のAIコマースのエコシステムにおける地位を確立しつつあるのです。
AIが従来型の発見を破壊するというのは、もはや議論の段階ではなく、すでに起きている事実です。真の問題は、AIプラットフォームとユーザーにとって欠かせない、信頼できるコンテンツパートナーとして台頭するのがどのパブリッシャーかということなのです。
プラットフォームの変化に次ぐ変化に直面してきた業界にとって、AIへの移行はこれまでとは異なる意味を持ちます。それは、次世代の発見プラットフォームと直接的かつ価値ある関係を築く好機だということです。早期の成功者たちはすでにその地位を確立しつつあるのです。
1 本調査におけるeコマース小売業者の主要カテゴリは、「アパレル」「美容」「一般小売・商品」「趣味・レジャー」「ホーム・ガーデン」の5つを対象にしています。

