新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックとそれに伴う経済の混乱により、多くのパブリッシャーが経験している広告売上の減少は、広告スタックを改善し、売上を押し上げる方法を多くのパブリッシャーが考えるきっかけになりました。
柔軟性と透明性の高いオープンソースのヘッダー入札ソリューションをパブリッシャーに提供するという点で、Prebidは大きな成功を収めている:
実際、AdzerkのHeader Bidding Indexによれば、Prebidは米国と英国の上位1万サイトで見られるヘッダー入札ラッパーのうち72%のベースコードになっています。
この不確実な環境で、筆者はほかのヘッダー入札ソリューションからPrebidへの移行を検討しているパブリッシャー、いま利用しているPrebidの管理方法を再検討しているパブリッシャー両方の声を耳にしています。後者は多くの場合、運用するスタッフの数が削減されたことが原因です。
ヘッダー入札の改善を目指すパブリッシャーが考慮すべき3つの点を紹介:
マネージドサービスを検討する
Prebidは驚くほど柔軟なソフトウェアであり、その拡張性は、ほぼすべてのパブリッシャーのニーズを満たすことができることを意味します。そして同時に、実装する際、より多くの検討事項があることも意味します。
広告のマネタイズに精通した開発者や優秀な広告運用チームを持つパブリッシャーは、自社でPrebidを実装し、上手く実行可能な望ましい立場にあります。しかし、たとえ社内に十分なスキルが揃っていても、パブリッシャーがDIYという方針を選択し、自らPrebidを実装、維持することは理にかなっているのでしょうか?
筆者は独自のニーズに最適化された複雑なカスタム実装に成功した複数のパブリッシャーから話を聞いたことがあります。そのレベルのカスタマイズに積極的で能力もあるパブリッシャーは、DIYという方針からいくつもの付加価値を得られます。
しかし、多くのパブリッシャーはより標準的なPrebidを実装しているため、DIYを選択することにより、ほかの優先事項に割り当てられる開発者の時間を大量に消費してしまう結果になりかねません。
いくつかのベンダーがPrebidのマネージドサービス製品を提供しています。そうしたベンダーのサービスを利用すれば、数多くの経験によって蓄積された深い専門知識を得られます。さらに、ほとんどのマネージドサービスは、最初の実装とメンテナンスの両方を容易にする機能を備えています。
そうした共通機能のひとつが、Prebidの新バージョンへの簡単なアップグレードです。自分たちの手でバージョンアップするのは、多くの場合、メンテナンス上の頭痛の種になります。その結果、パブリッシャーはたびたびバーションアップを先送りします。そして、Prebidの最新機能や最適化を見落とすことになり、マネタイズに支障をきたします。分析もマネージドサービスの一般的な機能であり、パブリッシャーがパフォーマンスを理解、改善するのに役立ちます。しっかりした分析機能がなければ、Prebidの最適化に必要なデータを見逃すことになります。
すべてのベンダー(筆者を含む)は、自社のマネージドサービスがベストである理由を伝えたいと考えています。
Prebidのマネージドサービスを検討しているパブリッシャーに、筆者から偏りのないアドバイスをするとすれば、Prebid.orgのメンバーになっているベンダーを採用すべき:
Prebid.orgメンバーであるベンダーは例外なく、Prebid.orgのWrapper Code of Conductに同意しています。Wrapper Code of Conductはオークションの公平性と透明性を確保するための基準を定めたものです。Prebid.orgはメンバー企業が提供するマネージドサービスのリストを作成しています。
Server-to-server (S2S)への移行
Prebid.jsはブラウザから直接デマンドパートナーに入札を送信する選択肢を提供しています。これはクライアントサイドまたはPrebid Server経由と呼ばれることが多くサーバーサイド、また、Server-to-server (S2S)とも呼ばれます。Prebid Serverのリリースは2017年にさかのぼりますが、当初はなかなか普及しませんでした。
最近のいくつかの進化をきっかけに、Prebid Serverの人気は高まっています。現在、Prebid Serverは65の入札者を受け入れることができるため、パブリッシャーは幅広いデマンドパートナーとの取引が可能です。おそらく最も重要な進化は、ページレンダリングの高速化のメリットが明白になったことでしょう。広告読み込み時間の短縮は、ビューアビリティ(可視性)スコアとユーザー体験の両方が向上することを意味します。
ブラウザから直接複数の入札者をコールする必要がある場合、ページの読み込みは遅くなります。一方、Prebid Serverの場合、1度のコールで、サーバーサイドですべての入札者に送信されます。
パブリッシャーにとって、サーバーサイド入札に移行する際の最も大きな懸念は、サーバーサイド入札においてCookieのマッチ率がわずかに低下することによるアドレサビリティと売上への影響です。その結果、各入札者とPrebid Serverの間で余分なCookieの同期が必要になります。
ChromeにおけるサードパーティCookieの廃止は2年以内に迫っており(Safariではすでに終了)、マッチ率に関するクライアントサイド入札の利点はいずれ消え去る運命にある:
サーバーサイド入札のスピードを考えると、サードパーティCookieの消滅後、おそらくサーバーサイド入札がクライアントサイド入札よりも有利になるでしょう。
もちろん、パブリッシャーが自前のPrebid Serverを運用することも可能です。しかし、クラウド上でサービスを運用するのは、パブリッシャーの運用チームにとっては、やはり負担です。ほとんどのサービスはホストされたPrebid Serverを提供しており、これもマネージドサービスを真剣に検討すべき理由のひとつです。
さまざまなIDプロバイダーを試す
サードパーティCookieの終了はパブリッシャーにとって、広告主がオーディエンスを見つける手助けをするための代替的な仕組みが必要だということでもあります。広告キャンペーンの基本構成要素(ターゲティング、入札最適化、フリークエンシーキャップ、アトリビューションなど)のうちどれだけが、Cookie廃止後の世界で機能するかはまだわかりません。PrebidはIDプロバイダーに接続するためのIDモジュールを提供することで、パブリッシャーがCookie廃止後の未来に備えられるよう支援しています。この記事の公開時点で、Prebidで利用可能なモジュールはすでに10あり、今後さらに増えていくことが予想されます。
Cookieが完全に消滅する2022年にアドテクがどうなるかについては、いくつもの臆測や意見が飛び交っていますが、パブリッシャーがそのときに備えて今取るべき行動を正確に予測できる人はいません。
広告スタックを将来も維持するための最善の方法は、今すぐIDソリューションのテストを始める
理にかなったIDソリューションはパブリッシャーによって異なります。認証済みユーザーによるトラフィックの割合が大きいパブリッシャーはおそらく、ログインしたユーザーIDを利用するIDプロバイダーに価値を見いだすでしょう。また、地域差もあり、地域によって強いIDベンダーが変わる可能性もあります。
Prebidで利用可能なさまざまなIDソリューションを今すぐ試してみることが、Cookieのない未来に備える最善の方法なのです。
Originally published in Adzerk.