世界で最もモバイル中心な地域であるAPACは、モバイルアプリのイノベーションの最前線にいます。モバイル環境の計り知れないポテンシャルと独特の複雑さを認識しているPubMaticでは最近、APAC全域の多様な背景を持つ大手モバイルパブリッシャー数社を招いてカンファレンスを開催しました。私は幸運にも出席者らと交流し、議論を通じて多くの洞察を得ることができました。ここでは、その要点を共有したいと思います。
社内外の課題を乗り越える
モバイルパブリッシャーは現在、社内外に課題を抱えた不安定な状況を乗り越えようとしています。インフレなどのマクロ経済の圧力は、消費支出に大きな影響を与え、アプリ内購入の減少とマーケティング予算の削減をもたらしました。その結果、パフォーマンス広告(リワード動画など)に依存するアプリは、ユーザー獲得に要する予算の減少という課題に直面しています。これをさらに悪化させているのが業界全体で障害となっている状況であり、具体的には競争の激化によるユーザー獲得活動の増大、一部のパブリッシャーが報告したディスプレイ広告のCPMの低下、間近に迫ったデバイスIDの廃止がもたらすターゲティング広告への脅威などが挙げられます。
社内においては、多くのモバイル企業が組織的な課題に直面しています。企業が成長するにつれ、効果的なコミュニケーションに苦慮するようになり、それが適応性と迅速な意思決定の妨げになってきました。さらに、マクロ経済が不透明ななか、多くの企業にとって人材の確保が困難であることが明らかになり、ダイナミックなモバイル環境において競争力を維持するのに必要な改革を実施する取り組みが一層複雑になっています。
収益源を多様化する
古くからの格言にあるように、「すべての卵を1つのカゴに入れてはならない」ということです。ブランディング広告は、ユーザー体験への悪影響が少ないというメリットがあり、一般的に高品質で、ユーザーリテンション(維持)の向上につながることがよく知られています。そのため、カンファレンスに参加したモバイルパブリッシャーの多くは、パフォーマンス広告の運用だけに頼るのではなく、収益源を多様化する方向に舵を切ったといいます。しかし、特に中国や韓国など、仲介プラットフォームが普及している地域のパブリッシャーにとっては、課題が残されています。パブリッシャーはこれに対処するため、自社のセットアップ内にブランド専用の独立した入札経路を確保し、オークションパッケージとプライベートマーケットプレイス取引を促進する手法を採用してきました。
さらに、セルサイドとバイサイドのステークホルダー間の直接的なコミュニケーションを促進することは、バイヤーを啓発し、モバイル広告の本質的な価値とモバイルユーザーの計り知れないポテンシャルを認識してもらう上で極めて重要です。相手側の指標とニーズをより正確に把握することで、双方が戦略を最適化し、相互利益を最大化して、モバイルアプリブランド広告の成長を実現できるのです。
アドレサビリティ:新たな課題
カンファレンスに参加したモバイルパブリッシャーの大半は、AppleとGoogleだけでなく、政府によるプライバシー規制やデータ保護施策にも積極的に対応していると報告しています。Appleが広告識別子(IDFA)を非推奨としたことは、iOSトラフィックのCPMの低下とユーザー獲得コストの上昇を招き、生涯価値(LTV)の低下につながりました。また、出席者らはGoogleが提唱するプライバシーサンドボックスのイニシアチブへの対応が不可欠になると認めたものの、実行に移すのはタイムラインと詳細がより明確になってからだとする声も多く聞かれました。
ただしAPACにおいては、モバイル環境の複雑さから、代替IDの採用はまだ限定的です。カジュアルゲームやユーティリティアプリなどを手がけるパブリッシャーの一部は、ログインしたユーザーデータの収集に苦労しています。一方で注目に値するのは、Googleのパブリッシャー指定の識別子(とThe Trade DeskのUnified ID 2.0(UID 2.0)を採用したパブリッシャーのeCPMが30%向上したことです。これを受けて、電子メール情報を収集する戦略が慎重に検討されています。カジュアルゲームのパブリッシャーの一部は、ファーストパーティのゲームデータとサードパーティの確率的データを組み合わせることで、有望な結果を得てきました。
さらに、バイヤーはより正確にオーディエンスをターゲティングし、キャンペーンのパフォーマンスを向上させるため、アプリパブリッシャーからより多くのシグナル(コンテキストデータなど)を求めるようになっており、多数のパブリッシャーがこれに対応しています。
ユーザーフレンドリーな広告環境を整備する
アプリの開発元は、広告収益とユーザー体験のバランスに苦慮しています。IDFAポリシーの変更により、アプリによってオプトイン率に大きな格差があることが浮き彫りになるなか、あるカジュアルゲームのパブリッシャーは、ユーザー啓発のおかげでプレイヤーによる広告オプトインの受容度が向上したと報告しました。PubMaticの調査では、オプトインユーザーのeCPMは、オプトインしていないユーザーよりも2.7倍高くなっています。アプリユーザーに広告オプトインの利点を理解してもらうことは不可欠であり、それによってユーザーはより関連性の高いコンテンツにアクセスできるようになり、体験の向上につながります。パブリッシャーはまた、ユーザープロファイルを深く把握することで、ユーザーに合わせた広告モデルやオーディエンスの共感を得られるコンテンツを提供する必要があります。
さらに、カンファレンスに参加したパブリッシャーらは、広告需要がプレミアムで安全だと保証することが、ユーザー体験の全体的な整合性を守る上で最も重要だと強調しました。PubMaticは、世界有数の広告代理店やブランドと協力し、より高い水準の広告品質を確保していると自負しており、専門チームが広告のさまざまなコントロールを提供しています。その一例として、PubMatic不正広告、高負荷、動画再生のエラー、未申告の音声をはじめとするさまざまな広告クリエイティブの技術的問題を検出しています。
まとめ
競争の激化とアドレサビリティ環境の変化に伴う課題があることは認識されたものの、パブリッシャーたちは一様に明るい雰囲気で、新たなブランド広告がもたらす展望と、ユーザーとより深い関係を築く意気込みで高揚していました。また、PubMaticのような技術パートナーとの関係を活用できることも認められています。オーディエンスターゲティングを例にとると、PubMaticの「Connect」は、ワークフローを簡素化する自動化されたオーディエンス管理手段へのアクセスを提供し、負担から解放されたチームは戦略的イニシアチブやより価値の高いタスクに集中できるようになります。適切なアドテクパートナーと協力することで、パブリッシャーは絶えず進化する業界のさらに先を行き、成長とイノベーションのための新たな道を切り開くことができるのです。